不動産登記 土地は1筆ごと、建物は1個ごとに記録される。 表題部には土地:登記原因、所在、地番、地目、地積 建物:登記原因、所在、家屋番号、種類、構造、床面積 *区分建物(マンションなど)の床面積は内法面積(壁の内側の面積)、それ以外は壁芯面積で記録される。 権利部には登記義務はなく、甲区:所有権に関する事項(差押えを含む) 乙区:抵当権、賃借権、地上権など *土地登記の地番、建物登記の家屋番号は必ずしも住居表示と一致しない 登記の効力 ・対抗力:第三者に対抗できる。例外.借地上の建物を登記すれば借地権の登記をしなくても借地権を第三者に対抗できる。建物の引き渡しを受ければ借家権の登記をしなくても借家権を第三者に対抗できる。 *仮登記だけでは第三者に対抗できない ・公信力:なし。登記記録を信じて取引した場合、真実と異なっていても法的に保護されない。 不動産登記の調査:だれでも、登記所において登記事項証明書や登記事項要約書の交付を受けることができる。 売主等の本人確認 登記時:登記済証または登記識別情報(無ければ事前通知制度など) 登記後:買主等に登記識別情報が通知される。 登記以外の調査資料 ・公図:地図に準ずる図面として土地の位置、形状、地番を表示しているが精度は低い ・不動産登記法14条地図:精度は高いが設置されていない土地も多い ・地積測量図:同上 ・都市計画図:用途地域、建ぺい率、容積率、市街化区域、市街化調整区域の区別、都市計画で定められた道路・公園などの都市計画施設が表示 ・固定資産課税台帳:土地・建物の所有者、所在地、固定資産税評価額などを閲覧できる。但し、所有者(または代理人)、借地人、借家人のみ 不動産の価格 公的価格 ・公示価格:地価公示する標準値の価格 ・基準値標準価格:地価調査による基準値の標準価格で対公示価格とは100% ・相続税路線価:相続税・贈与税の基準で公示価格の80% ・固定資産税評価額は固定資産税、都市計画税、不動産取得税の基準で公示価格の70% 不動産の鑑定評価の手法 ・原価法:再調達原価を求めてこれに減価修正を行い積算価格を求める ・取引事例比較法:取引事例を収集して取引価格に事情修正・時点修正を行い、地域要因の比較・個別的要因の比較を行い比準価格を求める ・収益還元法:対象不動産が将来生み出すであろう期待収益の現在価値を求める事で収益価格を求める。賃貸用不動産の評価だけでなく自用不動産の評価お賃貸を想定することにより適用できる。 ① 直接還元法:対象不動産の年間の純利益を還元利回りで除す ② DCF法:対象不動産の保有期間中の純収益の現在価値の総和と将来売却する際の復帰価格(売却価格)の現在価値を合計する 借地借家法 借地権とは建物所有を目的とする土地の地上権または賃借権をいう。 ・地上権(物権)を譲渡するには地主の承諾は扶養、賃借権を譲渡する場合は必要 ・普通借地権:存続期間が満了し借地人が更新を請求したときは借地上に建物がある場合に限り更新出来る。契約更新がない場合、建物を時価で買い取ることを請求できる。 定期借地権には3種類あり ・一般的借地権:建物用途に制限なく存続期間は50年以上 ・事業用定期借地権等:事業用に限り10年以上50年未満 ・建物譲渡特約付借地権:建物用途に制限かく存続期間は30年以上でその後に建物を地主に相当の対価で譲渡する旨を定める 借家権 一時使用目的の建物の賃貸借には借地借家法は適用されない。なお、借り主は借家家の登記をしなくても建物の引き渡しがあれば借家権を第三者に対抗できる。 ・普通借家契約:存続期間が満了した場合、借り主は更新請求できる。 ・定期借家契約:存続期間は自由。期間満了の1年前から6ヶ月の間に借り主に対しての通知をしなければ対抗できない。床面積200㎡未満の居住用建物を対象とした契約において借り主にやむを得ない事業があれば中途解約できる。 取り壊し予定の建物賃貸借:取り壊す時に賃貸借が終了することを定めることができる 造作買取請求権:エアコン等の造作をしたら貸主に時価で買取り請求できる。 借賃増減請求権:借賃(家賃)の増額または減額を相手方に請求できる。 区分所有法・宅地建物取引業法 区分所有法:分譲マンションなど区分所有建物の権利関係や管理などを規定した法律 ・専有部分:敷地利用権は専有部分と分離処分できない ・共有部分:共有持分は専有部分の床面積の割合による *敷地利用権:専有部分を所有するために建物の敷地に関する権利(所有権、賃貸借) 集会の決議:全員が管理組合の構成員となり任意脱退はできない。管理者は少なくとも毎年1回集会を招集する。建替えには5分の4以上の賛成が必要 規約の効力:区分所有者のみならず包括承継人(相続人)、特定承継人(購入者)、専有部分の占有者(同居人、賃借人)にも効力が及ぶ。 宅地建物取引業法 自ら所有する物件を自ら賃借する場合は免許は不要。 事務所ごとに業務に従事する者5人につき1人以上の割合で専任の宅地建物取引士を置かなければならない。 媒介契約には3種類 ① 一般媒介契約:自己発見取引ができ契約期間は自由。指定流通機構への物件情報の登録義務は無い。 ② 専任媒介契約:自己発見取引ができ契約期間は3ヶ月を上限。依頼者への報告は2週間に1回以上。 ③ 専属専任媒介契約:自己発見取引はできず1週間に1回以上の報告義務あり。 報酬額の制限 ・売買:売買価格×3%+6万円 ・賃借:双方から合わせて賃料の1ヶ月分 クーリングオフ 業者が売主である場合、事務所以外で買受の申し込みまたは売買契約を締結した買主に適用。ただし、買主が指定した場合は不可。 売買契約上の留意点 ・売買対象面積 登記面積(公簿売買)と実測面積(実測売買)がある 分譲マンションは登記面積は内法面積で記録され、契約書やパンフレットには壁芯面積で表示される。 手付金 解約手付と推定され相手方が契約の履行に着手(売主は引き渡し・登記手続、買主は内金や残代金の支払)するまでは買主は手付金を放棄して売主は手付金の倍額を償還して契約を解除できる 危険負担 引き渡し前に売主の責によらない事由(自然災害、類焼)により建物が滅失・毀損した場合、買主は売買代金を全額支払わなければならない。ただし、実務上、このケースでは買主が契約解除できる特約を付している。なお、売主の過失があれば買主は履行の催告をすることなく直ちに契約を解除できる。 瑕疵担保責任 売主は目的物の瑕疵について善意でも無過失責任を負う。善意無過失の買主は損害賠償を請求したり、契約解除できる。買主が瑕疵を発見してから1年以内。宅建業者が売主の場合、引渡日より2年以上とする特約は有効。新築住宅の構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分について、引渡日から10年間は責任を負う。 債務不履行 債務者は損害賠償責任を負う。履行遅延の場合は債権者は債務者に履行を催告し、催告期間内に履行がない場合は債権者は契約解除できる。一方、債務者が履行不能である場合、債権者は履行の催告することなく直ちに契約解除できる。 都市計画法 都市計画区域とは市街化区域(既に市街地を形成している区域及び10年以内に優先的・計画的に市街化を図るべき区域)と市街化調整区域に区分(線引)できる。その他区域を非線引き都市計画区域という。区域外の無秩序な開発が進行することを制限するため都道府県は準都市計画区域を指定できる。 用途区域 市街化区域は住居系用途地域、商業系用途地域、工場系用途地域に分けなければならない。 開発許可制度 ・開発行為:建築物を建築するために行う土地の区画形質の変更 ・開発許可:事前に都道府県知事等の許可を受けなければならない ・建築の制限:工事完了公告前は建築物の建築出来ないが、当該土地を譲渡は可能。 建築基準法 用途地域ごとに建築物の制限が定められている。敷地が2以上の用途地域にわたるときは、過半の属する地域の用途制限が敷地全体に適用される。 道路に関する制限 ・接道義務:建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない。 ・セットバック:幅員4m未満の道では、道路中心線から水平距離2mずる両側に後退した線が道路境界線となる。ただし、中心線から2m未満で、一方が崖地、皮、線路敷地等では、4m後退した線が道路境界線とみなされる。セットバック部分は建築物の敷地として利用出来ず、建ぺい率や容積率の計算においても敷地面積には含まれない。 建ぺい率:建築物の建築面積の敷地面積に対する割合。用途地域ごとに都市計画で定められているが一定事由に該当すれば加算がある。 容積率:建築物の延べ面積(床面積)の敷地面積に対する割合:前面道路の幅員が12m未満の場合、指定容積率と前面道路の幅員×法定定数のいずれか低い方が限度。 防火規制:防火規制の異なる地域(防火地域、準防火地域、指定なし)にまたがっている場合、建築物全部について防火規制の厳しい方の制限を受ける。また、防火地域内においては3階以上延べ面積100㎡超の建物は耐火建築物としなければならない。 その他 ・絶対高さ制限:第一種低層住宅専用地域および第二種では10mまたは12m以下。 ・斜線制限:道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限、日影規制 ・建築確認:工事着手前に敷地・構造・建築設備に関する法律に適合するか建築主事または指定確認検査期間の確認を受ける。 その他法令上の制限 農地法:農地を売買したり、宅地などに転用する場合には許可を要する。 土地区画整理法:土地の区画形質の変更及び公共施設の新設または変更に関する *仮換地:換地処分を行う前に仮換地を指定できる。仮換地が指定されると効力発生日から換地処分の公告がある日まで仮換地を使用・収益できるが、従前の土地は使用・収益できない。 *土地の所有者が一定の割合で土地を無償提供することを減歩という。一定の土地を換地と定めずに土地区画整理事業の費用に充てるため施行者が処分するための土地として保留地を定めることができる。 不動産の取得・保有と税金 不動産取得税:売買、交換、贈与、新築、増改築による取得には都道府県が課税。相続、借地権、法人の合併などによる取得は課税されない。 免税点:土地10万円以下、家屋は建築で23万円以下・売買や贈与や交換では12万円以下 税額:固定資産税評価額×税率(本則は4%であるが、土地及び住宅は特例により3%となる)宅地の課税標準は2分の1になる *住宅の課税標準の特例:一定の住宅の課税標準は最高1200万円を控除できる ※認定長期優良住宅の場合、控除額は最高1300万円となる 登録免許税 土地・建物を取得したときの所有権移転登記、新築したときの所有権保存登記などの際に国が課税。登記権利者と登記義務者が連帯納付義務を負う。 ・表題登記は課税されない ・固定資産税評価額×税率 *抵当権設定登記の場合は債権金額 ・軽減税率:土地と一定の自己居住用の住宅用家屋に適用 ・消費税:土地の譲渡・貸付は非課税 建物の譲渡・貸付は課税(住宅は非課税) 印紙税 不動産売買契約書、建築請負契約書、金銭消費貸借契約書などの課税文書に対して国が課税。 固定資産税=固定資産税評価額×税率1.4% *住宅用地の課税標準の特例(小規模は評価額の6分の1、一般は評価額の3分の1) 納税義務者に対して市町村が課税。 *新築住宅の税額軽減の特例(3年間または5年間、床面積120㎡以下の部分の固定資産税が2分の1に軽減。 納期は4,7,12,2月であるが一括納付もできる。納税義務者は年の中途でも、その年度分の全額を納付する義務あり。 都市計画税=固定資産税評価額×税率0.3% *住宅用地の課税標準の特例(小規模では評価額の3分の1、その他は評価額×3分の2) 市街化区域内に所在する土地・家屋の所有者に対して市町村が課税。 不動産の譲渡と税金 ・分離課税 譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用) *取得費=譲渡資産の取得に要した金額(仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、印紙税など)+その後の設備費・改良費-減価償却相当額 *取得費が不明な場合、譲渡価額の5%相当額を下回る場合、5%相当額を概算取得費とすることができる。 *相続により取得した財産を相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡したときは支払った相続税のうち一定金額を取得金額に加算できる(取得費加算の特例) *譲渡費用:仲介手数料、印紙税、測量費、賃借人への立退き料、建物の取り壊し費用、広告費など。なお修繕費や固都税は不可。 短期譲渡所得は税率39.63% 長期譲渡所得は20.315% 居住用財産の譲渡の特例 共通事項 ① 配偶者、直系血族、生計を一にする親族には適用不可 ② 3年に1回しか適用できない。 ③ 居住の用に供さなくなった日の3年後の12月31日までに譲渡すれば適用 居住用財産の3000万円特別控除 *相続により取得した居住用財産が空き家となり、一定のリフォームまたは取り壊してから譲渡した場合にも最高3000万円控除できる 居住用財産の長期譲渡所得の特例(軽減税率の特例) 譲渡した年の1月1日における所有期間が10年超の自己の居住用財産を譲渡した場合。居住用財産の3,000万円特別控除と併用ができ、3000万円特別控除後の所得金額が6000万円以下の部分について税率が軽減される。6000万以下の部分は14.21%、6000万超えの部分は20.315% 特定の居住用財産の買換えの特例 譲渡した年の1月1日における所有期間が10年超え、居住期間が10年以上の居住用財産を1億円以下で譲渡し新たなに買い換えた場合に適用。 *譲渡益に対する課税は繰延、差額部分ついてのみ譲渡があったものされる。 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 譲渡した年の1月1日における所有期間が5年超えの居住用財産を譲渡し譲渡損失が生じたときは損益通算できる、通算出来ない金額は翌年以後3年に渡り繰越控除できる。 ・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 譲渡損失が生じ、新たに住宅ローンを利用して買い換えた場合に適用。 ・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 住宅ローン残高のある居住用財産を譲渡して譲渡損失が生じた場合に適用。 その他の不動産の譲渡の特例 固定資産の交換の特例 同じ種類の固定資産と交換したときは譲渡がなかったものとして課税を繰り延べられる。 特定事業資産の買い換えの特例 事業の用に供している土地建物を譲渡し、一定期間に買換え資産を取得して、そこから1年以内にその買い換え財産を事業の用に供した場合は譲渡益の一部の課税を繰り延べられる。 土地の有効活用 ・自己建設方式 ・事業受託方式:デベロッパーが土地所有者から受託 ・土地信託方式:信託銀行が土地所有者に代わり土地の運用を行う、賃貸型が主流。運用実績に応じて配当される。 ・等価交換方式:土地所有者は土地をデベロッパーは建築物の建設費を出資し、各々の出資割合で土地・建物を所有する。部分譲渡方式と全部譲渡方式がある。 ・定期借地権方式: 建設協力金方式:テナントが差し入れた建設協力金を建設費に充当する 共同開発方式: 等価交換方式における土地所有者の取得する建物の床面積 ・原価積上方式(出資額方式)総事業費のうち土地評価額の割合に応じた床面積を土地所有者に還元 ・市場性比較方式(収益還元方式)デベロッパーが最低限確保したい粗利益率や販売可能単価をもとに必要とする専有部分の床面積を計算し残りを土地所有者に還元 等価交換の税務 譲渡益の繰延ができる 不動産の証券化 ・DCF法:保有期間中に生み出される純収益の現在価値の総和と保有期間満了時点における対象不動産の復帰価格(売却価格)の現在価値を合算して収益価格を求める ・NPV法(正味現在価値法):DCF法による収益価格から投資予定額(現在価値)を差し引き、プラスであれば投資価値有りと判断。 ・IRR(内部収益率法):DCF法による収益価格が投資額と同じになる割引率(内部収益率)を求め、それが期待収益率を上回れば投資価値有りと判断。 借入金併用型投資 ・レバレッジ効果:借入金の金利より収益率が上回っている場合に生じる ・DSCR(借入金償還余裕率)=元利金返済前の年間キャッシュフロー-年間純収益/年間元利金返済額 デューデリジェンス:専門家による詳細なリスク分析 不動産の利回り 単純利回り:年間賃料収入/総投資額 純利回り(NOI利回り)=純収益(年間賃料収入-諸経費)/総投資額 不動産投資信託(J-REIT) 会社型投資信託(投資法人)が投資法人債の発行や銀行からの借入により資金調達、クローズドエンド型の不動産投資信託は時価で売買できるので流動性が高い。